2020/11/5
2020年度現場体験セミナー
【開催報告】
青森で風車に登ってみよう!
全国トップクラスの風力発電導入量を誇る青森県で風車登頂や
国内最大の陸上風力発電所を見学しながら風力発電事業における環境整備の一環を学ぶ
【目的】
日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアムでは、海洋開発人材の育成のため、海洋開発に関連する講義と現場視察を組み合わせたセミナー等を実施しています。
風車に実際に登頂し、その構造に関する知識を取得するとともに、地元ステークホルダーとの対話を通じて国内で導入拡大が見込まれる洋上風力発電事業における環境整備について理解を深めることを目的として開催しました。
【主催】
日本財団 オーシャンイノベーションコンソーシアム
【協力】
弘前大学地域戦略研究所
【実施期間】
2020年9月22日(火・祝)-24日(木)
【開催場所】
青森県
【対象者】
● 以下の条件を全て満たす方
・海洋開発分野において、活躍する意志および可能性がある
・所属大学の指導教員等からの承諾を受けられる
・利用施設等が定める新型コロナウイルス染症への安全対策に従う
・応募時点で日本国内の大学・大学院に在籍している日本国籍の学生
・応募時点で日本国内の大学・大学院に在籍している理工学系の学生(学部3年生~修士1年生)
・セミナー終了後1週間以内に所定の書式にてアンケートを提出できる
・本事業の広報の為、プログラム風景を含む個人情報をウェブ等にて公開することについて、同意できる
・閉所恐怖症ではない
・高所恐怖症ではない
【プログラム】
9/22(火・祝) |
・オリエンテーション
・講義「北日本における風力発電の現状分析、洋上風力における今後の展望」
①弘前大学 地域戦略研究所 所長 本田明弘先生
②弘前大学 地域戦略研究所 准教授 久保田健先生
・交流会
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9/23(水) |
・講義「風車の運用・保守・点検について」
①イオスエンジニアリング&サービス株式会社 六ケ所村事業所 竹田貴衛様
・実技:風車(ナセル)登頂:高さ65m
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9/24(木) |
・講義
①漁業と洋上風力発電」弘前大学 地域戦略研究所 教授 桐原慎二先生
②「洋上風力発電にかかる取組」つがる市
・ウィンドファームつがる見学
・自治体・漁業者との懇談
①小泊漁業協同組合 「漁業と洋上風力発電」
②中泊町「自治体と洋上風力発電」
・青森県日本海北側有望区域見学
・龍飛風力発電所見学
・石崎漁港小型風車見学(漁港等の閉鎖性海域における小風力風車利用によるナマコ種苗生産や魚類の養殖環境の監視・改善について説明)
・解散
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【参加学生の体験談】
大久保 尚哉
(名古屋大学 修士1年)
私はエネルギー業界に就職し、エネルギー資源に乏しい日本のエネルギー安定供給に貢献したいと考えています。クリーンなエネルギーでありエネルギー自給率の向上に寄与する再生可能エネルギーがどのように計画、運営されているのか学びたくて今回のセミナーに参加しました。セミナーを通じて以下の三点を学ぶことができました。
一つ目は洋上風力発電の地元への理解です。『海洋汚染や漁獲量への影響から地元の住人の方々から悉く反対されているのではないか。』と考えていました。しかしながらセミナーを通じて地方自治体の方々や漁協の方々から洋上風力発電所に対して好意的な意見を多く聞けたのが驚きでした。法人税や固定資産税、地元への寄付といった金銭面だけではなく『日本のエネルギー全体を考えたときにどこかが引き受ける必要がある』といった声が聞かれたためとても感銘を受けました。
二つ目は風力発電所における点検業務の過酷さです。高さ60mを超すナセルまで梯子を使って自分の力で暑い夏の日も凍えるような冬の日も登っていると伺いました。冷暖房設備もなく風で大きく揺れるナセルに登るのは体力的にも精神的にも過酷であると感じました。IoTを使った点検やドローンを使用した省人点検が必要でありエンジニアとして身の引き締まる思いでした。
三つ目は学生の意識の高さです。参加者それぞれが日本のエネルギーに対して危機意識を持っていて刺激を受けました。機械系では事業の上流過程を垣間見る機会が少ないため自身を啓蒙する良いきっかけとなりました。エネルギーに関してド素人であるため参加にあたり不安もたくさんありましたが参加して良かったです。
岡村 太郎
(立命館大学 修士1年)
今回初めて青森で実施された海洋開発事業に関するセミナーに参加して、私は沢山の貴重な経験をさせて頂きました。
一つ目は、風力発電に関して理解を深めることが出来たことです。プログラム期間中に行われた講義では、風車の発電方法や世界の風車メーカーの紹介、風況シミュレーションといった風力発電に関する基礎的な内容から最新の情報まで幅広く、海洋開発分野を専攻していない私でも十分理解出来る位に分かりやすく教えて頂きました。今回のセミナーの中心である風車登頂研修では、六ケ所村で発電事業に携わるイオスエンジニアリング&サービス様の所有する60mの陸上風車に登頂しました。ナセルまでは長さ数十mの梯子を数回登り続ける必要があり、外の風による風車の激しい揺れと下を見下ろした時の怖さから登っている最中は何度か足がすくみそうになりましたが、頂上から見渡した際の外の景色は特別なものでした。実際に風車に登ることで、事業者の方々の日々の作業が電力の安定供給に繋がっていることを認識しました。そして最終日に中泊町で開催された地元の方々との懇談会では、成田組合長と漁協組合、役場の方々のお話を受けて洋上風車が地域活性化に重要な役割を担っていること、またその導入には地元の方々の理解と協力が欠かせないことを学びました。一連の研修を通じて、今後の日本における風力発電の大きな潜在能力と期待を私は強く感じました。
二つ目は、青森の魅力を存分に満喫することが出来たことです。セミナーの初日に滞在した浅虫温泉では、旅館最上階の温泉から眺める青森湾の夕日が最高でした。二日目の鰺ヶ沢温泉で夕食に頂いた海の幸は、忘れられないほど格別なものでした。この他にも、津軽三味線演奏会やミニクイズ大会、岩木山や十三湖の景色、中泊町のメバルなど様々なイベントや絶景、食事を満喫しましたが、最も印象的だったのは竜泊ライン展望台から眺めた洋上風車の景色でした。日本海から吹く強風と荒波に物ともせず、悠然と佇む風車の姿は非常に神々しく感じました。
三つ目に私がこのセミナーで得られたものは、多くの人々との出会いと共に築いた思い出です。プログラムを主催して下さった日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアムと弘前大学地域戦略研究所の職員や先生、プログラムに参加した仲間達と共に過ごした時間は非常に濃密で忘れられないものになりました。私は今後も海洋開発分野へ興味を持ちながら、セミナーでお世話になった方々と交流を続けていきたいと思います。ありがとうございました。
山本 直明
(早稲田大学 修士1年)
今回の現場体験セミナーでは、今までに体験したことのないことが多く非常に刺激をいただきました。洋上風力発電や風力発電についてのさまざまな視点からの考え方を聞くことができ、自分の中の風力発電に対するイメージをアップデートすることができました。具体的には、自分が想像していた以上に風力発電は成長過程にあることやその中でのヨーロッパのさまざま点における優位性などです。これから発展していくであろうという漠然とした考え方が事実ベースでここまで進んでいて、こういった課題があるというところまで深まりました。実際に風車に上って頂上の景色を見るという試みがあったのですが、はじめは面白そうではあるがどれほどのことがその経験から得られるのかは分かりませんでした。しかしいざ経験してみると、風車を維持管理することには実際に経験しなければわからない大変さ、またそういった人たちが風力発電を支えているのだという実感を持つことができました。どうしてもマクロな視点で物事を考えてしまいがちな学生にとっては視野を広げるいい機会だと思います。
加えて同世代の学生と多く交流することができる点も本セミナーの長所だと感じました。分野の異なる様々な学生と共通の再生エネルギーについて学ぶという経験はなかなか体験できることではありません。昨今は他分野の人間とコミュニケーションをとって一つの問題解決にあたるといったことは、理系の社会人に求められる重要な能力の一つとなっていると感じます。そういったスキルを養うこともできるので、非常に有意義でした。
大槻 映玲永
(弘前大学 学部3年)
今回の現場体験セミナーは、「私のスタートライン」になったセミナーでした。
私は高校生の時からずっと洋上風力に興味があり、大学で専門的に学び、卒業後は洋上風力の分野の仕事をしたいと思っており、大学生の内にできるだけ多くの現場を見ておきたい、発電事業専門の企業や自治体だけでなく住民の方や漁師さんの話を直接聞いてみたいと夢見ていました。そんな私にとって、このセミナーのプログラムはまさに夢を叶えられる内容でした。
セミナーで特に印象に残ったことが2つあります。
1つ目は、「風車登頂チャレンジ」です。地上からの高さが65mの風車の上まで登ってみようというプログラムです。最初は上まで行けるだろうと思っていました。しかし、実際に登ってみるとだんだん上に行くにつれ腕が疲れてきて4段階あるうちの3段階目の途中でギブアップとなりました泣。頂上まで行って風車の上からの景色をものすごく楽しみにしていたので、とても悔しかったです。ただ、実際に登ることで風車のメンテナンスすることがどれほど大変なことなのかを身を持って体感できましたし、風車の中の揺れも体感でき、さらに他のメンバーが上に行っているのを待っている間に付き添ってくれた作業員の方に現場で作業している時の事やメンテナンスについてたくさんお話を聞くことができました。最後まで行けなかったのは悔しかったですが、登れなかったからこそ得ることができたことや発見がありました。
2つ目は「漁師さんとの交流」です。
私はずっと漁師さんは洋上風力を良いように思ってないだろうと考えていたのですが、実際に「洋上風力の第一印象はどうでしたか」と質問させていただいたら、「原発に比べたら安全で、漁の邪魔にならず、強い風を有効利用できるので良いと思った」と洋上風力に対してすごく前向きで、この3日間で1番衝撃を受けました。また、過疎化などが進んでいる地域において風力は「地域振興の材料になる」という期待が大きいということや、みんなで協力して調査などに取り組むことで不安を解消していったというのは今回現場の方の声を聞いて初めて知ることができ、大きな発見となりました。
この3日間を通して、「地域の人と一緒に洋上風力で町を盛り上げたい」「洋上風力の課題を解決していきたい」という自分の指針を見つけられて、一緒に参加したメンバーの方々とも沢山意見を交流できて、新たな発見も沢山あり、本当に充実した日々でした。主催者の方々、現場の皆様、参加メンバーの皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
今回のセミナーは、私にとってまだスタート地点に立っただけに過ぎないと思っているので、ここで得た経験を土台にしてこれから研究活動に取り組んでいきたいです。
谷 知樹
(大阪府立大学 修士1年)
海洋資源・エネルギー開発に興味があった私にとって、今回の現場体験セミナーは、海洋開発に関わる学生・研究者の方だけでなく、洋上風車の設置候補地の漁業者・自治体の方とも意見交換を始めとした交流が行え、更に陸上風車への登頂やオペレーション施設の見学を行えるなど、今後の海洋エネルギー開発に関わるにあたって貴重な知識・経験を得られる機会と考え、参加をさせていただきました。
非常に印象に残ったことは、漁業組合の組合長の方が、洋上風車について、海洋利用に対する自身のこだわりを大切にされながらも、非常に大きな期待を寄せていらっしゃることでした。過去の海洋開発にて漁業へ影響が出たことを踏まえ、洋上風車の設置検討・調査の段階から海洋環境に配慮し、組合に所属される漁師の方や自治体の方、電力会社の方など関係するすべての方々を巻き込みつつ事業を進め、次世代のエネルギー源として洋上風車を受け入れていらっしゃる姿に感銘を受けました。
風車登頂においては、安全を最優先にしつつ、様々な機器の説明や日々の仕事の様子などを非常に丁寧に話していただき、普段目にすることのないタワー内やナセル内の細かな部品についても説明をしていただけました。オペレーション施設についても管理の様子や緊急時の対応についてなど、様々な質問に答えていただけました。そのため、洋上だけでなく、陸上風車にも強い関心が生まれました。
また、それらの過程全てにおいて、海洋開発に関心がある学生同士で意見交流ができたばかりでなく、研究者の先生方からの専門的な所見をいただけたため、今回のセミナーは自身の知識・経験の蓄積はもちろんのこと、海洋開発に対するモチベーションが大きく向上する非常に有意義なものとなりました。
江間 巧樹
(名古屋大学 学部3年)
今回のプログラムへの参加を決めた理由は、洋上風力産業に対する単純な興味からでした。
この3日間の中で実際に風車に登る機会を頂き、24時間の風車の監視システムを見学させていただくなど、風車が稼働しているまさにその現場での体験をすることで風車に対する理解がより進み、私がプログラム参加以前に持っていた知識がより立体的なものになったと感じています。また、エネルギー産業全体を俯瞰する上でも非常に貴重な経験値になりました。
例えばイオスエンジニアリングさんの風車を見学させて頂いた際、その風車の内部では多数の機械が稼働しており、それらを日々保守点検されている社員の姿を間近で見て、このような地道な日々の保守があるからこそ私たちに安定した電力の供給がなされているのだと実感しました。
この他にも、地元の方と一緒に食卓を囲ませて頂き、行政の立場で洋上風力産業に関わっている方々から直接話を伺うなど、インターネットだけでは到底得ることの出来なかったであろう知見も養うことが出来る機会も豊富でした。関係者の方々から様々な話を伺う中で、洋上風車を設置する上で地域住民や漁師の方との協調意識がプロジェクトの成功には不可欠な要素であると認識することができました。
今回のセミナーを通して、人々の生活、そして今後の日本の産業を支えていく再生エネルギーに関する興味はますます強くなりました。この経験を今後の研究やその後のキャリアにおいても前向きに活用していけたらと思っています。
清水 敦彦
(大阪大学 学部4年)
「来てよかった」の一言に尽きます。
専門家の方々に囲まれ、気になることがあれば丁寧に説明してくださる環境が自分にとっては新鮮で次から次へと質問が浮かびました。今まで勉強していたことの細かい部分が埋まって行くような感覚でした。加えて今回のセミナーでは管理会社、漁業関係者や地方自治体というような様々な立場からの洋上風力発電を知ることができ自分の視野も広がりました。
また、実際の風力発電を見たり、登ったりすることができたこともとてもよい経験となりました。いままでは所詮インターネットなどで知った知識を並べているだけでした。実際、青森にたくさん風力発電が立っているのをみて、もし自分が風力発電について知らなければ、恐怖を感じるであろうと思いました。しっかりとした安全性について説明の必要性を非常に感じました。「百聞は一見に如かず」とはこういうことなのかなと思いました。その他にも先生方がバスの中で色々なことを話して下さるのも非常に興味深かったです。
見るもの聞くもの感じるもの全てが面白く、将来洋上風力発電に携わりたいという思いを後押ししてくれました。本当にありがとうございました。
森脇 哲人
(神戸大学 修士1年)
今回、日本財団海洋開発現場体験セミナー(青森)に参加させていただき、大変貴重かつ有意義な経験をさせていただきました。
私は大学院で海事科学を専攻しており、将来は気象や海洋、再生可能エネルギーが関連する分野の仕事に就きたいと考えています。今回のセミナーは自分の関心のある分野での現場体験やそれらに関する知識を深く学べると思い、参加することに決めました。
セミナーを通して、自分の専攻分野への理解がさらに深まり、知らなかったことも多く学べました。また、将来自分が働く姿も想像することができました。
普段の生活では、遠くから風車を見ることがやっとのことだったので、実際に風車のすぐ近くまで行き、登頂することができ、驚きと楽しさの連続でした。風が強くてナセルから顔を少ししか出すことができなかったですが、そこから見える景色は写真では伝えきれない、登った本人しか味わうことのできない絶景でした。風力発電に携わる現場社員さんの苦労が少しは実感できたように思います。
また弘前大学をはじめとする先生方の講義を聞き、洋上風力発電の計画をする際、漁業関係者との話し合いや漁業との共生が、いかに重要なことであるかも学ぶことができました。質問をすると迅速かつ丁寧に受け答えしていただき、理解を深めることができました。
このセミナーで、心に残る貴重な体験やこれらの分野に精通している先生方の講義を聞き、将来、再生可能エネルギー関連の仕事に就きたいという思いがさらに強くなりました。残り少ない学生生活でさらに関連知識を深め、今回のセミナーのことも含め、将来に活かせるように努力していきたいです。
最後になりましたが、新型コロナウイルス下にもかかわらず、このセミナーを開催してくださった関係者の皆さまに感謝いたします。青森という自宅から約1000km離れた地で、自分が期待していた以上に楽しむことができました。本当にありがとうございました。
佐野 繭姫
(弘前大学 学部3年)
今回の現場体験セミナーに参加させていただき、驚いた事は何点もありました。
その中でも、セミナーに組み込まれている、風車をメンテナンス管理している、六ヶ所村にあるEOSさんは私の中でとくに心に残っています。
イオスエンジニアリング&サービスさんに伺い、実際の65mの風車に登頂しました。頂上から一望した、広々とした景色を見た時に、エネルギー業界の規模の大きさを実感しました。さらに、同社では、全国の風車を一元に管理しており、管理画面も見させていただくことができました。風車の製造会社によって管理システムも異なり、製造会社ごとのモニターで管理してあり、正直非効率的と思う反面、この業務を管理する大変さを身近に感じました。
現在、私は青森の大学に在籍していますが、2泊3日の短期間の間で、素晴らしい景色と、美味しい食事に出会えて、改めて青森の美しさを痛感させられました。また、今後青森には洋上風車の建設が盛んになり、海の景観に風車が入ってくることになりますが、青森の陸上風車を見る限りでは、むしろ景観を良くしてくれるのではないかと思っています。
最後に、このセミナーを通して、風力発電の知識や体験だけではなく、一緒に参加していただきました、他大学の方と意見交換などもすることができ、自分にとってとても有意義な時間が過ごせたと確信しています。
〈参考〉
弘前大学 地域戦略研究所の開催報告を見る<こちら>
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